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2024/8月の1冊は、
LINA GHOTMEH - SERPENTINE PAVILION 2023 by Lina Ghotmeh
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レバノン出身、フランスを拠点に活動する建築家であり、「Lina Ghotmeh Architecture」の創設者であるリナ・ゴッドメ(Lina Ghotmeh)の作品集。2023年夏、ロンドンのサーペンタイン・ギャラリーで、作者がデザインを手がけた第23回目の夏季限定パビリオンの企画を収録した一冊。
企画から作者本人が深く関わり、フランスのデザインコンサルタンシー「Les Graphiquants」が装丁を担当した本書は、その実践の中心にあるアイデアを反響し、さらに発展させている。
あわせて、作者の作品のエコシステムの一部を担う、建築、芸術、写真、小説の各分野で高く評価されている寄稿者によるテキストとビジュアルによる介入が一挙にまとめられている。作家のバーナード・コメント(Bernard Comment)は、作者のルーツと受け継いできたものを遡りながら、ベイルートでの生活の体験とそれが作者の実践に与えたインスピレーションについて、建築史家のベアトリス・コロミーナ(Beatriz Colomina)は、建築と自然や生物との相関関係について書いている。
パビリオンのひだ状の屋根の形状を受けて、料理人のデイヴィッド・ジルバー(David Zilber)はヤシ酒のレシピを紹介して自らが実践している発酵と空間とのつながりについて語り、アーティストのアリ・チェリ(Ali Cherri)は、ゴットメの空間作成のアプローチに通じる、ベイルートの美術館を題材にした推理小説を寄稿した。
また、「サーペンタイン」のマイケル・R・ブルームバーグ会長は素晴らしい建築を作るためのレシピを紹介し、パビリオンで働くセキュリティチームのウェイン・フラー(Wayne Fuller)、キーロン・ディキンソン(Keiron Dickinson)、ゴマ・アリ・マゲッド(Gomma Ali Maged)、ツンデ・ドボジ(Tunde Dobozi)、デサイダー・ペレイラ(Desider Pereira)は、優れた建築の原則について意見を述べている。
本書では、ジャド(Jad)とタレク・アトゥイ(Tarek Atoui)がパビリオンのために作曲したサウンドスケープを楽しむこともできる。『Dawn』と名付けられたこの合唱曲は、作者のスケッチ、ドローイング、参考資料に基づいて作曲された。フォトグラファーのフアド・エルクーリ(Fouad Elkoury)がセレクトした歴史的写真の数々は、作者にとって大きな意味を持つ場所の歴史を物語っている。アーティストのシモーヌ・ファタル(Simone Fattal)がダマスカス市内の一部を描いた2点の版画も掲載されている。
本書では、こうした魅力溢れる寄稿とともに、作者の制作の必要不可欠な一部である、自身による水彩画の一部も見ることができる。パビリオンの設計プロセスを伝える作者のスタジオのリサーチウォールの一連の画像、スケッチ、ドローイングも掲載。これらの見開きと並置されたパビリオンの周囲の植物や自然環境のイメージは、建築と自然のつながりを示している。キュレーターのハンス・ウルリッヒ・オブリスト(Hans Ulrich Obrist)によるロングインタビューでは、作者の活動を紹介するとともに、パビリオンの背景にあるリサーチ、開発、アイデアの軌跡がたどられている。
by Lina Ghotmeh
/hardcover
/188 pages
/170 x 250 mm